
五行の水
冬の深い淵。低いほうへ流れ、どこへでも入りこむ
『書経』は水を「潤下」と表します。水はうるおし、低いほうへと流れ、器の形にも岩のすき間にも合わせて入りこみます。川や雨、雪どけ水、地下を流れる水、そして考えの深さも、伝統的には水になぞらえられます。季節は冬、方角は北、色は黒。四神で北を守る玄武の「玄」も黒を指し、「玄冬」は冬の別名です。青春・朱夏・白秋・玄冬と並べると、人の一生を四季にたとえる言い回しになります。
十干の壬(みずのえ)と癸(みずのと)が水です。壬は陽の水で大河や海、癸は陰の水で雨や霧、朝露にたとえられます。十二支では亥と子が水で、亥月・子月はおおよそ11月初めから1月初め、木枯らしの季節から年の瀬にかけてです。いのしし年・ねずみ年生まれは年の支が水になります。ただし生まれ年の支は四本の柱の一本で、命式全体の水の多さや日干の五行とは分けて見ます。
対応表
| 五行 | 季節 | 方角 | 色 | 十干 | 十二支 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 冬 | 北 | 黒 | 壬癸 | 亥子いのしし、ねずみ |
伝統的な性格のイメージ
伝統的には、水は「智」と結びつき、頭がよく回り、状況に合わせて形を変えられる性質とされます。今の暮らしでいえば、通勤電車が止まった瞬間に別ルートを三つ思いつく人、飲み会で相手によって話題を自然に切り替える人、調べものを始めると深夜まで掘り続ける人。柔軟で察しがよいぶん、本心を見せないまま流れに合わせてしまい、自分がどうしたいのかを後回しにしやすいとも見られます。
相生と相剋
金は水を生じます。冷えた岩肌から清水がにじみ出るように、金は水の源とされます。水は木を生じます。雨が田畑や山の木々をうるおし、新芽を押し出します。土は水を剋します。堤防が川をせき止め、あぜが田の水を囲うように、土は水の行き先を決めます。水は火を剋します。消防のホースを思い浮かべれば十分です。剋は傷つけ合いではなく、あふれそうな水には岸を、燃えすぎる火には水を、という釣り合いの仕組みです。
命式の中の水
水が多い
天干に壬・癸、地支に亥・子が多い命式は、水が強い形です。伝統的には、頭の回転が速く、情報を集めるのがうまく、人の気持ちの流れにも敏感だと読まれます。水が多すぎると、川が岸を越えるように考えが広がりすぎて決めきれない、気分が流されやすい、という見方もあります。冬生まれと夏生まれでは、同じ量の水でも読み方が変わります。
水がない
天干に壬・癸がなく、地支の本気にも亥・子がなければ、水がない命式です。それでも申には壬、辰と丑には癸が蔵干として入っていて、地下水のように見えない層を流れていることがあります。水のない人は考え方がまっすぐで回り道が少ない、と言われることもありますが、悪いことではありません。水が必要かどうかは命式全体で判断されます。
日干が水の人
日干が壬(みずのえ)か癸(みずのと)なら水の日干です。壬は大河や海のような陽の水で、スケールの大きな発想と行動力があり、人を巻きこみながら進むタイプとされます。自由を好み、細かく管理されるのは苦手かもしれません。癸は雨や霧のような陰の水で、静かに周りにしみこみ、人の話を聞いて気持ちをくみ取るのが得意。表には出なくても、見えないところで場を支えています。壬は流れ、癸はしみこむ、と言い分けられます。
よくある質問
五行で水がないのは良くない?
良し悪しは水の有無だけでは決まりません。水がないというのは天干と地支の本気に壬・癸・亥・子が出ていないという意味で、申・辰・丑の蔵干には水が含まれます。黒い色や名前で水を補うという民間の考え方もありますが、この診断では扱っていません。水が要る命式かどうかは日干の強弱や生まれた季節で変わり、本サイトでは判断していません。
ねずみ年・いのしし年は水の人?
子と亥は水の地支なので、年の支は水になります。ただし干支(えと)は年柱という一本の柱の話で、四柱推命で自分の五行というときは、日柱の天干である日干を指すのが一般的です。ねずみ年生まれで日干は丙(ひのえ)の火、ということも普通にあります。
木春の雨を受けて、上へ横へと伸びていく若木
火夏の真昼の日差し。強く燃えて、遠くまで照らす
土種を育て、重みを受け止める大地
金秋の澄んだ空気と、研ぎ澄まされた刃
水冬の深い淵。低いほうへ流れ、どこへでも入りこむ
陰陽五行と四柱推命は伝統文化として楽しむためのもので、将来の出来事を予言するものではありません。健康・お金・法律に関わることは、それぞれの専門家に相談してください。